第十七回ポイント講座(数IIB 垂線のベクトル 点と直線(もしくは平面)の距離の公式)
こんにちは。
オンライン講座の採点をしている稲荷興心です。
昨日で全仏オープンが終了し、やっと生活スタイルが正常に戻りそうです。時差って恐ろしいですね。
さて、採点中に感じた典型的なミスや勘違いについて書くブログの第十七回目です。今回は前回の最後に載せた例題の(2)の四面体の体積の求め方について書こうと思います。テーマは垂線のベクトルです。また前回から続いている例題を再掲しておきます。
A : (1, 0, 3)、B : (2, -2, 6)、C : (3, 1, 4)、D : (1, -3, 0)とするとき、
(1) 三角形ABCの面積を求めよ
(2) 四面体ABCDの体積を求めよ
今回の例題に直接関係があるのは点と平面の間の距離ですが、それを説明する前に一つ次元を落として平面内での点と直線の距離から話を始めることにします。
点と直線の距離の公式は有名ですが、その前段階である垂線のベクトルについては覚えていない人もしばしば見かけます。正射影ベクトルといった少しマイナーかもしれない知識から来ているので、基本から振り返りたいと思います。
まずは正射影ベクトルからスタートしましょう。正射影ベクトルとは、あるベクトルに対して元となるベクトルをあるベクトルの垂直方向から投影した場合にできるベクトルのことを指します。少し言葉ではイメージしにくいので図を用いてみると以下のようになります。始点は違っても問題ないですが簡易化のためAに統一しています。
ただ上の図は一例であり、下のような(i)と(ii)の異なる二つの場合が考えられます。この二つの場合はいずれも計算してみると二つのベクトルの内積や大きさを使って同じ形で表されることが分かります。内積がcosθを使用して定義されているため、θが90°より大きいかによってベクトルの向きが変わることがうまく表現できているわけですね。
この正射影ベクトルを使って直線ax+by+c=0にA : (p, q)から下ろした垂線のベクトルを表現してみましょう。前々回のブログで取り上げたようにこの直線の法線ベクトルは(a, b)となっています。また正射影ベクトルを考えるために直線上の点B : (k, l)をとります。図において重要な部分を取り出して下に載せています。
垂線のベクトルが表せたので、垂線の大きさを求めてみましょう。これはよく知られている形です。
この形から垂線のベクトルを覚えようなどと考えるとマイナスを忘れて覚えたりしてしまうので注意が必要です。直線に対する対称な点を求める際や円と直線が接するときの接点を求める場合などに使用するため、垂線のベクトルも覚えておきましょう。
また今回のテーマである平面ax+by+cz+d=0にA : (p, q, r)から下ろした垂線のベクトルについても求めてみましょう。直線で考えた場合とほとんど同じです。
また垂線の大きさについても計算しておきましょう。
今回の例題で使用する知識の説明が終わったので、実際に四面体の体積を求めてみましょう。
今回のテーマは「垂線のベクトルについて」でしたが、理解するためには正射影ベクトルの知識が必要でした。知っている公式をどこまで遡って理解しているかについて考えてみることで足りていない知識を補うことができたりするので、ちゃんと理解できているかを確認してみるのも良いでしょう。
最後に次回のブログのテーマとして、以下の質問をしておきます。どうやったら判断できるかについて考えてみてください。
「今回の例題について、Dから平面ABCに下ろした垂線の足Hは三角形ABCの内部に存在するか」
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