第十二回ポイント講座(数IIB 数列 漸化式 特殊解)

query_builder 2023/05/26
ブログ
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こんにちは。

 

オンライン講座の採点をしている稲荷興心です。

そろそろテニスの全仏オープンが始まりますね。男子はトップハーフにクレーコートで強い選手が集まっているようですが、ボトムハーフも面白くなりそうです。個人的にはハードコートシーズンで調子が良かったコルダがクレーコートでも強いのか気になっています。

 

さて、採点中に感じた典型的なミスや勘違いについて書くブログの第十二回目です。今回から3回かけて漸化式の解き方について書いてみたいと思います。漸化式を解く問題は入試問題でも確率を求める時などでよく使用するので、いくつかのパターンについて全て対応できるようにしておきたいテーマです。最初はシンプルな漸化式を用いて特殊解について考えてみたいと思います。例題は以下になります。

a1=1, an+1=3an+4 の一般項an を求めよ」

 

最初に等差数列と等比数列について一般項を求める方法を確認しておきましょう。

(i)等差数列について

初項が1、公差が4の等差数列の一般項anを求めてみましょう。

このとき、a1に対して4を加えるとa2になり、a2に対して4を加えるとa3になり、・・・と続いていくことが分かります。つまりa1に対して、a241回、a342回、a443回、・・・、an4(n-1)回加えています。

このことから、an=a1+4(n-1)=4n-3 が求める一般項になります。

 

(ii)等比数列について

初項が1、公比が3の等比数列の一般項anを求めてみましょう。

このとき、a1に対して3を掛けるとa2になり、a2に対して3を掛けるとa3になり、・・・と続いていくことが分かります。つまりa1に対して、a231回、a332回、a433回、・・・、an3(n-1)回掛けています。

このことから、an=a1×3n-1=3n-1 が求める一般項になります。

 

さて本題です。今回の例題はanに対して3を掛けてから4を加えたものがan+1となっていますが、等差数列と等比数列のどちらに近いでしょうか。こういった漸化式は、実は等比数列と近い関係にあります。どういうことかというと、元の漸化式を少し変形すると等比数列の形に変形できるということです。

 

ここで登場するのが特殊解の考え方です。特殊解はこういった漸化式を等比数列の形にするときに使います。

 

まずは漸化式の最終的な目標の形を考えてみることにしましょう。元の漸化式はan+1=3an+4であり、等比数列にしたいことからan+1=3anの形に近づけたいです。つまり、右辺にある4をうまく分配することでan+1-α=3(an-α)のような形を作ることを目的としています。

 

この形にできれば、a1-αに対して3を掛けるとa2-αになり、a2-αに対して3を掛けるとa3-αになり、・・・と続いていくことがわかるため、an-αはa1-αに対して3(n-1)回掛けていることが分かります。((ii)の等比数列のところを参照)

 

また、このαのことを特殊解と呼びます。この特殊解αの求め方は簡単で、an+1=3an+4an+1anの代わりにαを代入した α=3α+4 を解けば求まります。

α=3α+4

α=-2

 

このことから以下の変形ができます。

an+1=3an+4

  ↓

an+1+2=3(an+2)

 

では、どのような考えからα=3α+4が出てくるかについて考えてみましょう。元の漸化式とα=3α+4について引き算してみると、ちょうど分配したいと思っていた4が消えて目的の形になります。またan+1anの影響も考慮していることが分かります。

an+1=3an+4

α=3α+4-

an+1-α=3(an-α)

 

このような考え方から、元の漸化式のan+1anの代わりにαを代入した式について解くことで特殊解が求まります。

 

最後に特殊解が求まった後の回答も確認しておきましょう。

an+1=3an+4

an+1+2=3(an+2)

よってan+2=(a1+2)×3n-1=3n

 

今回の説明はここまでですが、最後に何点か書いておきます。

1)    特殊解を求める式(α=3α+4)については単なる計算に過ぎないので、解答欄に書く必要性はないと感じています。

2)    次回以降のブログでも取り上げますが、特殊解は漸化式を解くときの基本なので、今回のような簡単な問題でしっかり原理を理解しておきましょう。

3)    ときどき特殊解を求めているのに、その後が進まない解答を見かけます。an-αのような形が一かたまりなので、an-αについて等比数列を解くことが大事です。

 

少し長くなりましたが、数列の範囲は割と他の分野に対して独立しているので、もし他の分野が苦手に感じていたとしても、十分数列を得意になる可能性があります。挫けず頑張りましょう。


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