第七回ポイント講座(数IA 解の配置 グラフの形)
こんにちは。
オンライン講座の採点をしている稲荷興心です。
ゴールデンウィークを満喫していたため、前回から少し更新が遅れてしまいました。今週から少しずつ頑張っていこうと思います。
さて、採点中に感じた典型的なミスや勘違いについて書くブログの第七回目です。今回は数IAの二次方程式の解の配置の問題について書いてみたいと思います。苦手な人が多いように感じていますが、基礎的な問題だけでなく、入試問題においてもパラメーターを含むようなグラフの通過領域を求めるときなどにも問われるので、非常に重要度が高い問題です。しっかりと理解してどのような場合でも答えられるようにしておきましょう。
今回は解説を先にし、例題を後ほど載せるので解説を読んでから一度考えてみてください。
最初に解の配置の問題を解く上で必須となる知識について確認しておきましょう。
「方程式f(x)=0の実数解はy=f(x) のグラフとx軸の交点のx座標と一致する」
これが大前提となるので、忘れていた場合や知らなかった場合はしっかりと復習しておきましょう(最短でマスターする数学p.105~参照)。
つまり「aを含む二次方程式f(x)=0が範囲内に解をもつようなaの値の範囲」について考える場合には、「y=f(x)とx軸の交点が範囲内に存在するようなaの値の範囲」を考えればよいことになります。この言い換えからy=f(x)のグラフの形について議論すればいいことがわかります。具体的に言うとy=f(x)のグラフが範囲内においてx軸と交点を持つようにaの条件を絞り込んでいく過程が、この問題を解く過程となります。
次に実際に問題を解く際に考えることについて確認していきましょう。今回は単純化のためにf(x)のx2の係数が正であるとして考えてみます。(もちろん負であることや定まっていなくて場合分けしないといけないこともあります)
(1)
グラフの形を限定していくために、場合分けしながら考えていく必要がありますが、多くの問題において範囲内に解が一つのみ存在する(つまりx軸との交点が一つのみの)状況を最初に考えると良いです。
範囲内に解が一つのみ存在する状況を考える上で、範囲の設定によって方法が変わってきます。範囲の設定は大きく分けて二種類あります。
(i)「Aより大きい(小さい)範囲に解が存在する」
(ii)「B<x<Cに解が存在する」
(A、B、Cは問題で与えられた定数)
(i)の場合については、f(x)のx2の係数が正であることからy=f(x)のグラフは下に凸であり、f(A)<0となっていればy=f(x)のグラフはx=Aより左側と右側に一つずつx軸との交点を持ちます。
(ii)の場合については、f(B)>0かつf(C)<0となるか、f(B)<0かつf(C)>0となれば、B<x<Cの範囲にy=f(x)のグラフはx軸と交点を持ちます。この2パターンについて、f(B)・f(C)<0とすればいずれの場合も表せます。
(f(B)・f(C)=0となるのはf(B)とf(C)のどっちかが0の場合、f(B)・f(C)>0となるのはf(B)とf(C)が共に正、または共に負となる場合となっています)
このように、いずれの範囲の設定の問題についても、解が一つ存在する場合が簡単に求まるので最初に確認してしまうのがおすすめです。
((1)の場合の解説終わり)
(2)
次に範囲内に解が二つ(重解も含む)存在する場合について考えてみましょう。範囲内に解が一つのみ存在する場合(1)とは分けて考えたいので、先ほど考えた条件と別の場合について考えることになります。
つまり(i)の場合についてはf(A)≧0、(ii)の場合についてはf(B)・f(C)≧0について考えることになります。
(i)においてf(A)≧0とすると下図のような場合が考えられますが、この中でA<xにおいてy=f(x)がx軸と交点を持っているのは四角く囲った3つの場合のみです。つまりこの3つの場合になるように条件を絞っていきます。
最初にy=f(x)のグラフがx軸と交点を持たない場合(☆)を除くことを考えます。これは簡単で判別式D≧0としておけば良いです。
次に残っている除きたい4つの場合(①~④)と目的の3つの場合で何が異なるかについて考えてみます。すると目的の3つの場合では軸がx=Aよりも右にあり、除きたい4つの場合ではそうなっていないことに気が付きます。
つまり、絞り込む条件は(軸のx座標)>Aとなります。
以上の結果から(i)では以下の3つの条件を満たすとき、範囲内に解が二つ(重解も含む)存在する条件と一致していることがわかりました。
f(A)≧0
D≧0
(軸のx座標)>A
次に(ii)においてf(B)・f(C)≧0の場合について考えてみましょう。このときf(B)≦0かつf(C)≦0とすると、y=f(x)のグラフは下に凸なのでB<x<Cにおいてx軸と交点を持たないことになります。つまり範囲内に解が存在するならば、f(B)≧0かつf(C)≧0である場合に限られることがわかります。
つまり一つ目の条件はf(B)≧0かつf(C)≧0(ただしf(B)=f(C)=0は除く)となります。
このとき、下図に示したような場合が考えられますが、B<x<Cにおいてy=f(x)のグラフがx軸と交点を持つ場合は四角く囲った4つの場合に限られることがわかります。
また(i)の場合と同様に、y=f(x)のグラフがx軸と交点を持たない場合(☆)を除くことを考えると判別式D≧0が必要です。
除きたい場合(①~⑧)と目的の場合の差も(i)と同様に軸が範囲内に含まれているかどうかであることがわかります。
B<(軸のx座標)<C
以上の結果から(ii)では以下の3つの条件を満たすとき、範囲内に解が存在する条件と一致していることがわかりました。
f(B)≧0かつf(C)≧0(ただしf(B)=f(C)=0は除く)
D≧0
B<(軸のx座標)<C
つまりいずれの場合も以下の3つの条件について考えています。
・与えられた範囲の端(A、B、C)における関数値
・判別式
・軸の位置
これらの条件を考えることで目的のグラフの形となるように条件を絞り込めます。
((2)の場合の解説終わり)
最後に(1)と(2)から出てきた条件は違う場合について考えた結果なので答えを求める際は出てきた条件を合わせてあげれば良いです。
では今回の解説の復習として例題をやってみましょう。
解答は下に載せておきます。
もちろん今回の解説で取り上げた場合だけでなく、与えられた範囲の設定が小なりイコールになっている場合やf(x)のx2の係数が定まっていない場合など、様々な設定が出てきます。とはいえ、基本的にはy=f(x)のグラフの形を絞り込んでいくことには変わらないので、一問ずつ状況に合わせて条件を考えてみてください。x2の係数が定まっていない場合の練習問題も最短でマスターする数学の演習60(p.114)で扱っているので、取り組んでみると良いでしょう。
今回は解の配置の問題について、何から考え始めるべきか、またどのように考えていくのかについて書いてみましたが、これを機に得意な問題にしていってもらえると幸いです。
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