共有点を持つとはどういうことか

query_builder 2024/02/16
ブログ
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こんにちは。

 

通信講座の採点をしている稲荷興心です。

今日から塾としては今年度最後の週になりました。つまり演習数IIIと演習2のクラスの直前演習は今日が最終日になります。残り一週間何を最後にやるべきかについては人それぞれだと思いますが、できる限りの努力をして本番を迎えてほしいなと思っています。個人的には暗記の部分を重点的にチェックしつつ、暗記に疲れたところで思考の練習をしておくのが良いのではないかと思います。

 

さて、今日は久しぶりに数学の問題について書いてみたいと思います。昨日の採点中の不思議な答案のお話です。最初の部分は簡単なので気楽ですが、後半が少し難解で良い説明が思いつくかどうかが少し不安です。基本的には数IIBの内容ですが、楕円の方程式が一部出てくるので数IIICの知識があれば納得しやすいかもしれません。理解しやすい説明になれば良いなと思っています。

 

それでは早速問題に移りましょう。簡略化していますが、こんな問題でした。

「S : x2+y2+z2=9とα: x+z=3は共有点を持つか」

球と平面が共有点を持つかという問題ですが、模範解答としては球(S)の中心(0, 0, 0)と平面の距離が球の半径よりも短いので共有点を持つとすれば良いです。点と平面の距離の公式についてはこちらのブログをどうぞ。

 

この問題に対して以下のような答案が届きました。

 


正直なところ、この答案を見て最初はどういうことを言っているのかいまいちわかりませんでした。じっくり考えてみた結果、少し面白い話がわかったので今回のブログとして取り上げます。どうやら途中式で出てくる楕円の方程式はSとαの共有点の集合である円をxy平面に正射影した楕円のようです。

 

少し詳しく考えてみることにしましょう。下の図を眺めながら読んで貰えばありがたいです。あるz=kという平面でこの図形を切ると、(もしその平面がSやαと交点を持つならば)Sは円に、またαは直線になり、その円と直線の交点が二つ生じる瞬間がkを動かすことで出てきます。

 

k(=z)を消去した式(x2+y2+(3-x)2=9)で表されるグラフはこの二点を含むことになります(直線束や円束と同じ考えです)。また二つの式からkを消去することで一つの式にしたので条件が一つ減少してしまっていますが、この式とx+k=3という二つの式で考えれば、この2つの交点の座標が求まることになります(A=0、B=0と同値な条件はA-B=0、A=0などがあります)。

 

このとき、z=kをkの値を変化させて上下に動かすと生じた交点はすべて2x2+y2−6x=0上の点となっていることがわかるので、2x2+y2−6x=0がxy平面にSとαの共有点を正射影した楕円の方程式になっているようです。

 

実際に共有点を持たない球と平面の組み合わせであるx2+y2+z2=9とx+z=6からzを消去して整理してみると2(x−3)2+y2=−9となり実数xと実数yが存在しないことがわかります。つまりzを消去してできる方程式において実数xと実数yが存在するかどうかと、Sとαが共有点を持つかどうかが一致することになります。

 

ただし、zをそのまま消去するとしてしまった場合、どのように考えたかが伝わりにくく感じます。この解法で採点者を納得させる答案を作成するのは至難の業でしょう。やはり中心と平面の距離で共有点を持つかどうかを判断した方が速く、そして書きやすいです。

 

今回の問題では平面における連立方程式の話を空間に拡張できるという新しい視点を得ることができました。採点をしていると色々な答案が送られてくるのでそんな方法があったのかと思うこともしばしばですが、基本的には遠回りだったりすることも少なくありません(笑)。解法を考えてみるのも勉強として非常に大事ですが、一般的に使用される解法を覚えておくのも重要です(特に演習を行う前の数IAや数IIBの場合ではそうです)。基本を抑えつつ、考える問題に対応できるように頭を働かせる練習をすると良いのではないかと思います。

 

今日は不思議な答案についてのブログでした。以前の不思議な答案についてのブログもあるので(詳しくはこちら)、興味があれば覗いていってください。円順列の問題です。

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