第二十一回ポイント講座(数IA 場合の数 円順列 重複がある場合)
こんにちは。
オンライン講座の採点をしている稲荷興心です。
じゅず順列って言いにくい言葉ですね。あまり口にすることがないので練習の機会も少ないですし。
さて、採点中に感じた典型的なミスや勘違いについて書くブログの第二十一回目です。今回は今週月曜日に採点していた際に悩まされた場合の数についての問題について書いてみたいと思います。二人の答案を採点していたのですが、解答とは違う方法で答えを出しており、別解について考えてみると興味深い内容になっていました。実際の問題とは少し数字を変えていますが、以下のような問題でした。
「A3つとB4つがある。これらを円状に並べるとき、並べ方は何通りあるか。ただし回転させて重なる並べ方は同じ並べ方とする。」
まずは採点に使用している解答から確認してみましょう。4つのBが最大何個連なっているかに注目すると2~4個であることがわかるため、それぞれについて考えると図1で示したような5通りになっています。注意点としてはBを2個と2個に分けた(4)について、考えられる別の場合についても回転させると重なるため、数えてはいけないことが挙げられます。
解答の確認が終わったところで、実際に届いた答案について考えてみたいと思います。一つ目の答案は以下のような内容でした。
これはおそらくAとBの置き場所を決めて(図2)、3つのAをどこに置くかで7C3通りあり、この数え方では7C3通りの中にそれぞれ7通りずつ回転させると重なる並べ方が存在している(一例 : 図3)と考えたようです。
この答案は問題が無いように見えますが、少し状況を変えて考えてみましょう。すると実は考慮されていなかった問題が存在することに気が付きます。例えばA3つとB3つを円状に並べる場合はどうでしょう。
最初に示した方法で並べ方を考えてみると4通りになります(図4)。しかし、先ほど問題なさそうに見えた方法で計算してみると並べ方について考えているにもかかわらず、整数にすらなりませんでした。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。
この問題がなぜ起こるのかについての解決は採点を行っていた他のチューターとの会話で気がつくことができました。実はあるパターンにおいて、回転させると重なる並べ方が実際は6個も無いことが原因でした。図5を見てください。6C3通りの並べ方のうち、図5のように並ぶのは2通りだけです。それにもかかわらず6で割ってしまうと実際の並べ方より少なくなってしまうということです。
ではなぜA3つとB3つの場合にはこのようなことが起き、A3つとB4つの場合ではこのようなことが起きないのでしょうか。その違いはどこにあるのかについて考えることにしましょう。
図5で見つかった回転していく間に異なる並び方は6通より少なくなる並び方について注目すると、並び方の中に循環があることが分かりました(図6)。AとB一個ずつの2個の要素からなるパターンなので2個分時計回りに回転すると元の並べ方と一致することが分かります。このことからこの並べ方については、1個分だけ時計周りに回したものしか違う並べ方にならないので、回転させて重なる並べ方は2通りになることが分かりました。
もう少し考えるためにA4つとB4つの場合についても考えてみましょう。この場合について数え上げてみると10通りになります(図7)。
この中で並び方に循環が見られるのは6と10の場合になります。まず6の場合、4個分ずらすと同じ並びになることから回転させて重なる並べ方は4通りです(図8)。また10の場合2個分ずらすと同じ並びになることから回転させて重なる並べ方は2通りです(図9)。
では並べ方の内部に循環が生じるのはどのようなときかを考えてみましょう。各要素の個数の最大公約数が1ではないときに、公約数の数だけグループを作り、そこに各要素を同数ずつ振り分けると各グループは要素の数が同じにできます。A4つとB4つの場合は公約数2なら二つのグループにそれぞれA2つとB2つを分けることが、また公約数4なら四つのグループにそれぞれA1つとB1つを分けることができます。
あとはそれぞれのグループ内で要素を同じ順に並べ、それをさらに円状に並べると循環する並べ方ができます。公約数2でグループを作ると図7の6の並べ方になり、公約数4でグループを作ると図7の10の並べ方になります。
ここまでの考察でなぜA3つとB4つの場合はこのように考えて良いかが分かりました。すなわち3と4が互いに素であったため、単純に7で割ると答えが出るということでした。
今回の問題で送られてきた答案をさらに良い解答にするためには、回転して重なるものが全て7種類ある理由について言及すると良いでしょう。また、場合の数の問題は漏れがなく重複もなくが重要なので解答の考え方にこだわりがなければ、一番最初に示した方法が一番安全だと思います。
今回のブログはここまでにしましょう。次回のブログでは他の答案についても少し考えてみたいと思います。こういった問題について、他にどんな考え方があるのかを考えてみるのは面白いですね。採点していて勉強になりました。
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