科学を志す高校生へ
こんにちは。
通信講座の採点をしている稲荷興心です。
昨日の晩御飯は近所のスーパーで金目鯛が安かったらしく(そんなこともあるのかといった感じですが)、金目鯛の煮付けでした。その際、目玉は食べることができるのか、という話になりました。目玉といっても水晶体はクリスタリンというタンパク質で構成されているため、加熱していれば普通に食べることができるし、現にマグロの目玉は珍味として有名だと主張すると、じゃあ食べてみろと言われ食べたところ、そんなに美味しいものではありませんでした。固かったですし。
そこで、少し気になってクリスタリンについて調べてみると、生体内で珍しく入れ替わりのないタンパク質のようです(ウィキペディアの情報なので信頼度は怪しいかもしれませんが)。そういった都合上、目に異常が生じた際には回復しにくいことにも納得がいきます。また、異常が生じないようにクリスタリンの一部はシャペロンとしての機能(他のタンパク質の折りたたみを助ける機能)を担っているようです。大学院時代にタンパク質の品質管理(特に小胞体におけるタンパク質の折りたたみ)についての研究をしていたため、なんとなく身近な話題でした。
かなり前に東北大学時代の友人(博士課程に進学して研究に勤しんでいるはず)と話していた際に、「生物学の知識はある程度までのレベルで十分面白く、それ以上のレベルになると専門的になりすぎて覚えること自体が大変になる」といった話をしたことを覚えています。つまりひとと話す上ではある程度の知識を持っていれば十分知的な会話が楽しめる、といった内容だったような気がします。現在の生物学は(他の学問の分野もおそらく同じですが)、そういった理由もあって細分化が以前よりも進んでいるように感じます。僕自身は所属していた研究室の研究内容にそこまで興味があったわけではなく、修士の修了が見えてきた段階で他の分野に移るほどのエネルギーも自身に感じていなかったため、生物学には見切りをつけることにしました。
先ほど「それ以上のレベルになると専門的になりすぎて覚えること自体が大変になる」と書きましたが、最新の情報を追うためには大量の論文の中から重要な論文を発見して読み込まなければなりません。論文にはAbstract(要旨)があるので、ある程度は全てを読むことなく内容を把握できますが、Abstractを読んで内容を理解するにはその分野に詳しい必要があり、そのレベルに到達するためにはかなりの研鑽を積む(つまり多量の資料を読む)必要があります。この勉強の段階において、多くの場合、自分が求めている情報のみがまとめてある資料は少なく、多量に読んでその中から自分の必要な部分を抽出し理解していかなければなりませんが、多くの資料が英語で書かれているため、英語力が中途半端だと心が折れてしまいます(僕がそうでした)。
つまり、科学を志すならば高校生の段階で英語に慣れ親しんでおくことが案外大事になるように感じたわけです。最近はDeepLなどで簡単に英文が日本語として読めるようになってきましたが、英語を英語のままで速く読めるのが情報を得るために一番であることは間違いありません。大学で学問をしている人は基本的に英語を読むことに苦痛を感じていないような感触がありました。おそらく英文を読み慣れているのでしょう。科学の道に進みたいと考えているのならば、英文読解と英作文は避けては通れない道なので、高校生のうちから覚悟を持って英語を勉強しておくのが良いのではないかと思っています(笑)。
また、これは完全に蛇足ですが、研究室に配属されて何から勉強したら良いか分からない場合は所属していた先輩の修論のintroductionに挙げられていた論文にあたってみてください。多くの場合、研究室で必要とされる論文がまとまっていると思います。僕はこの事実に最後に気がついて、なんでもっと早く知れなかったんだと落ち込みました。そろそろ卒論や修論も佳境の時期になってきましたが、書けばなんとかなるので病むことなく書き上げることを頑張ってください。案外なんとかなります。
今日は科学を志す高校生へのメッセージでした。
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